最初は「皿洗い要員」だと思っていた
大学の近くで、時給と家からの近さだけを見て選んだのが「創作料理 一喜」でした。
入った頃の私は、飲食の仕事を「皿を下げて、料理を運ぶだけの作業」としか思っていませんでした。
ピークタイムはとにかくバタバタで、「早く片付けてって言われたからやっている」感覚。お客様の顔や名前はほとんど覚えられず、「ごちそうさま」の一言も、正直あまり心に入ってきませんでした。
そんな私にとって、店主の吉岡さんの「作業と仕事は違うで」という一言が、後から大きな意味を持つようになります。
「作業」と「仕事」の違いを突きつけられた夜
転機は、忙しい金曜の夜でした。宴会のラストオーダーを取り違え、刺身の盛り合わせを一皿出しそびれてしまったのです。
お客様は笑って許してくれましたが、営業後のミーティングで吉岡さんにこう言われました。
「今のは、単なるミスちゃう。お客さんの“時間”を預かってるって意識がなかったから起きたんや。」
怒鳴られるわけではなく、淡々と「仕事」はお客様の感情に責任を持つことだと語られました。その時初めて、「料理を運ぶだけ」ではなく「時間と気持ちを預かっている」という感覚が芽生えました。
「在り方」を学んだ仕出しと宅配の現場
少しずつ任されることが増え、仕出しや宅配の手伝いにも行くようになりました。
法事用のお膳をお届けした帰り道、吉岡さんが「このお弁当で、久しぶりに集まる家族が思い出話をするんやで」と話してくれたのを覚えています。
ただ時間通りに届けるだけなら「作業」です。でも、一喜では「この方たちにとって、今日はどんな一日か」を想像することまでが「仕事」。
地域の方へ無料でお弁当を配布した時も、「食べて終わり」ではなく、「町を少しでも明るくしたい」という思いが根っこにあることを、現場で肌で感じました。
失敗とフィードバックを「次の一手」に変える
もちろん、その間にも失敗は山ほどしました。
・誕生日のサプライズプレートを出すタイミングを逃す
・コース料理の提供ペースが遅れ、会話が途切れてしまう
そんな時、吉岡さんから返ってくるのは「だからダメなんだ」ではなく、
「次、同じ状況になったらどう動く?」という問いかけでした。
怒られるより苦しい反面、「自分で考えて改善する」習慣が付きました。ノートに失敗と学びを書きため、同じミスをしないための工夫を自分から提案できるようになったのは、このフィードバックのおかげです。
人生の節目を任されるスタッフとして
社員になってからは、誕生日や記念日のコース設計、法事の仕出し、会食の進行など「人生の節目」に関わる仕事を任されるようになりました。
「娘の成人祝いで、去年と同じ席でお願いします」
「父の三回忌も一喜さんにお願いしたくて」
そんな言葉をいただくたびに、「料理そのものではなく、感情を売る店」という言葉を実感します。
お客様の表情、テーブルの空気、その場に流れる時間まで含めてデザインすること。それが、かつて“皿洗い要員”だと思っていた自分が、今一番やりがいを感じている部分です。
面接で自分の強みをどう語るか
飲食未経験でも、特別な経歴がなくても、伝え方を工夫すれば十分に強みになります。例えば、
・コンビニバイト:商品補充だけでなく、常連さんの好みを覚えていた経験
・部活やサークル:後輩指導やイベント運営で「裏方」として支えた経験
・家事や介護の手伝い:相手のペースに合わせてサポートした経験
など、「相手の時間や感情を大切にしたエピソード」に変換して話すと、飲食の仕事とつながります。大事なのは、何をしたかだけでなく、「その中で何を感じ、どう工夫したか」までセットで伝えることです。
入社後の成長スピードを上げる3つの行動アイデア
最後に、私自身がやって良かったと感じる行動を3つ紹介します。
1. メモを「段取りノート」にする:言われたことの記録だけでなく、「次回こうするとスムーズ」と気づきを書く。
2.先輩の一挙手一投足を“盗む”:トークのタイミング、料理を出す順番など、うまい人を真似る意識を持つ。
3. お客様の「表情」を見る癖をつける:忙しくても、テーブル全体を一瞬で見渡し、空気を読む練習をする。
どれも今日からできる小さな行動ですが、「作業」から「仕事」に変わるスピードを確実に上げてくれます。