「料理は感情を売っている」──一喜の原点
大阪・東大阪市、近鉄奈良線 瓢箪山駅から徒歩3分。創作料理 一喜(いちき)の扉を開けると、どこか懐かしいけれど少し特別な空気が流れています。代表の吉岡 篤は、一喜の存在意義をこう語ります。
「うちは料理そのものより、食べた後に残る感情や記憶を売っている店です。“あの日、一喜でみんなで笑ったよな”っていう時間を提供したいんです」
飲食を「最も身近な非日常のエンターテインメント」と位置づけ、「特別な日に選ばれる店」であり続けること。それが一喜の目指す姿です。
リーマンショックとコロナ禍──逆境がくれた問い
一喜の歴史は、決して順風満帆ではありませんでした。リーマンショック、詐欺被害、そしてコロナ禍。売上が大きく落ち込み、「閉めるか続けるか」の岐路に立たされた時期もあったといいます。
「きつい時期ほど、“なんのために店をやっているのか”を突きつけられました。お金のためだけなら、とっくにやめています。でも、お客さんの顔を思い出すと、ここで終わらせたくなかった」
コロナ協力金を活用した無料弁当配布も、その答えの一つでした。
「税金を託された以上、『いただきます』じゃなくて『お返しします』が筋やろうと。一喜を支えてくれた地域に、弁当という形で“ありがとう”を届けました」
困難を「学びと使命を確認する機会」と捉え、意味づけをし直して行動する姿勢が、一喜の強さをつくっています。
「待つな、自分から動け」──人任せにしない集客
一喜の仕事観を象徴するのが、「待たない」集客スタイルです。
「良い店なら、そのうちお客さんは来てくれる。そう信じたい気持ちはわかるけど、現実はそんなに甘くない。だからうちは、今でも自分たちでビラを配りに行きます」
スタッフと一緒に手作りのチラシを近所に配り歩き、商店街で声をかける。「恥ずかしい」「そこまでやるのか」と思うかもしれませんが、吉岡は言い切ります。
「待っているだけの商売は、だいたい長続きしない。自分から動いて、うちの存在を知ってもらう。その一歩を踏み出せる人は、どこに行っても強いですよ」
“声にならない要望”を汲み取る観察力
一喜で特に重視されるのが、お客様の「言葉にならないサイン」を読み取る力です。
「例えば、メニューを見ながら少し首をかしげているお客様がいたら、『今日はあっさり系の気分ですか?』と、こちらからさりげなく声をかける。『実は…』と本音が出てくる瞬間があるんです」
誕生日サプライズも、単にケーキを出すだけでは終わりません。
「照れくさそうにしている主役なら、あえて派手にしない。逆に、盛り上げたいタイプなら、店全体を巻き込んで祝う。同じ“おめでとうございます”でも、相手によって正解は変わるんです」
この観察力は、マニュアルでは身につきません。「テクニックよりも、人としての在り方」を大事にする一喜だからこそ、日々の会話やフィードバックを通じて、スタッフ一人ひとりが磨いていきます。
一喜で得られる「人間くさい成長」
一喜で働く魅力は、料理技術だけではありません。
- 自分から動いて、お客様との接点をつくる行動力
- 相手の表情やしぐさから本音を読み取る観察力
- 困難を前向きに意味づける思考習慣
- 「約束を守る」「思いやりを持つ」といった、人としての基本を徹底する姿勢
「AIの時代やからこそ、小さな店はあえて人間臭くありたい」と吉岡は言います。その“人間くささ”こそが、どんな環境に行っても通用する一生ものの財産になる、と考えているからです。
代表に聞いてみてほしい質問例
もし一喜の面接を受けるなら、こんな質問を投げかけてみてください。
- 「最近、お客様の“声にならない要望”に気づいたエピソードはありますか?」
- 「リーマンショックやコロナのとき、具体的にどんな行動をしましたか?」
- 「今、一喜が一番大切にしている『約束』は何ですか?」
- 「独立したい人に、どこまでリアルに教えてくれますか?」
これらの質問への答えから、一喜がどれだけ本気で「人に寄り添う店づくり」をしているかが伝わってくるはずです。
見学に行くときにチェックしてほしいポイント
店の雰囲気を知るには、実際に足を運ぶのが一番です。見学や食事の際は、次のような点を意識して見てみてください。
- スタッフ同士が楽しそうに会話しているか
- 忙しい時間帯でも、お客様一人ひとりをきちんと見ているか
- 常連さんと初めてのお客様、どちらにも距離感の良い接し方ができているか
- 代表が現場でどんな表情で働いているか
「経営者が楽しそうに笑っていないと、非日常の空間はつくれない」と語る吉岡にとって、現場での表情は何よりのメッセージです。
人間くさい仕事を通じて、自分の「在り方」を鍛えたい人にとって、一喜はきっと、多くの学びと挑戦の場になるはずです。