なぜ今、ベンチャーで「ガバナンス人材」が求められるのか
ベンチャー企業は「若者の軽いノリで始めた会社」と誤解されがちですが、実態は社会課題の解決を目指す真剣なプレイヤーです。一方で、事業成長に全リソースを投じるあまり、内部統制やガバナンスの整備は後回しになりがちです。ここにこそ、「常勤監査役」「内部監査担当」といったガバナンス人材の出番があります。
株式上場(IPO)を視野に入れるベンチャーでは、コンプライアンス、開示体制、リスク管理を短期間で立ち上げる必要があります。関西でIPO・ガバナンス構築支援を手がけてきたマルコ・ポーロ合同会社代表 黒坂卓司氏は、まさにこの「成長と統制の両立」を現場で支えてきた専門家です。
145名の監査役・800名の内部監査コミュニティが示すもの
黒坂氏が立ち上げに関わる「一般社団法人ベンチャー監査役協会」には約145名の監査役が、「ないかんMeetup」には約800名の内部監査担当者が参加しています。いずれも、急速に増えるベンチャー企業のガバナンス課題に対し、実務家同士で知見を共有しようというボトムアップの動きです。
ベンチャー監査役協会では、常勤監査役が押さえるべき実務や、取締役の暴走を抑止するためのチェックの勘所を学びます。ないかんMeetupでは、他社の内部監査事例やチェックリスト、インタビュー技法などをシェアしながら、「従業員による内部監査」を広げています。いずれも、守り一辺倒ではなく、企業価値向上につながる「攻めのガバナンス」を志向している点が特徴です。
未経験からガバナンス・内部監査に乗り換える3年間ロードマップ
1年目:基礎知識のインプットと「言葉を理解する」段階
会社法・金融商品取引法・金商法開示制度、内部統制のフレームワーク(COSO)などの基礎を押さえます。日商簿記2級レベルの会計知識を身につけ、決算書を自力で読める状態を目指しましょう。監査役協会やないかんMeetupの勉強会に参加し、実務で何が論点になっているかを肌で感じることが重要です。
2年目:小さな監査テーマを自分で回してみる
社内で簡易なモニタリング業務やチェックリスト作成を引き受け、「監査プロジェクト」を一つ完遂する経験を持ちます。ヒアリング、資料依頼、報告書作成までの一連の流れを体験することで、ガバナンスの現場感覚が身についてきます。
3年目:経営との対話を通じて「攻めの提言」ができるレベルへ
単なる指摘ではなく、「リスクを下げつつ事業スピードを落とさない」代替案まで提示できるようになると、ガバナンス人材としての市場価値が一段上がります。取締役会・経営会議への参加、重要案件の事前レビューなどに関わり始めるタイミングです。
20代・30代で押さえたい勉強法:法律・会計・ファシリテーション
法律:条文丸暗記より「ストーリーで理解」
会社法・金融商品取引法は、条文を暗記するよりも「なぜこのルールがあるのか」という背景を押さえることが近道です。IPO事例や不祥事事例を読み、「どの条文が問題になったか」を紐づけて学ぶと実務に直結します。
会計:決算書を「監査役の目」で読む
PL・BS・キャッシュフロー計算書を、単なる数字ではなく「この会社のリスクの在りか」を探る視点で読む練習をします。上場ベンチャーの有価証券報告書を定点観測すると、成長企業特有の指標や開示の工夫が見えてきます。
ファシリテーション:ヒアリングと合意形成の技術
監査役・内部監査は、相手の本音を引き出し、対立を調整し、合意をつくる仕事でもあります。1on1の面談ロールプレイや、ワークショップ型の会議運営を経験し、「問いの立て方」「聞き切る姿勢」を磨くことが有効です。
マルコ・ポーロで得られる経験と市場価値
マルコ・ポーロ合同会社は、関西を拠点にベンチャーの資本政策・IPO・ガバナンス構築を一気通貫で支援してきた稀有なプレーヤーです。鳥貴族(現・エターナルホスピタリティジャパン)やスマレジなどの成長の裏側には、資本政策設計やストックオプション設計、監査役・内部監査体制の構築といった地道なガバナンス支援が存在します。
こうした現場で、「社長の覚悟」に真正面から向き合いながらガバナンスを設計する経験は、その後どこへ行っても通用する汎用スキルになります。特定の業界に閉じない法律・会計・組織設計の知見は、CFO補佐、経営企画、上場企業の内部監査室など、多様なキャリアへの扉を開きます。
ベンチャーの成長と社会的信頼を同時に支える「攻めのガバナンス」。そのど真ん中で、自らの市場価値を高めていきたい人にとって、監査役・内部監査はこれからの有力なキャリアオプションと言えるでしょう。