「守る素材」から「心地よさを編む素材」へ
高速道路のフェンスや落石防護網——そんな「縁の下の力持ち」として使われてきたひし形金網を、「心地よさをつくる素材」として再定義したい。共和鋼業のプロジェクトは、いつもこの発想から始まります。
線の太さ・網目の大きさ・素材の組み合わせで、柔らかさも剛性も変えられる。その特性を、土木資材だけで終わらせるのはもったいない。そこで立ち上がったのが、社内外のアイデアを検証する場「X-Lab」。デザイナーや大学と組みながら、「暮らしの中での心地よさ」をひし形金網でどう表現できるかを探り続けています。
ニットフェンス誕生:一本の線を「編みもの」として見る
GOOD DESIGN AWARD2019 を受賞した「ニットフェンス」は、「金網を“編み物”として見直したら?」という問いからスタートしました。
工業用では網目50mm・線径3.2mmが一般的ですが、共和鋼業には網目10mm・線径2.0mmを編める特殊設備があります。この細かい網目を、ニットの目のように扱い、模様やリズムをつくる。デザイナーとスケッチを重ねるうちに、「景色をやわらかく切り取るフェンス」というコンセプトに到達。フェンスでありながら、街並みに“編み込まれるような存在”を目指しました。
技術的なハードルと、それを越えたエンジニアたち
ニットフェンスの課題は、「デザイン性」と「安全性・耐久性」の両立でした。
・複雑なパターンでも、荷重が一点に集中しない構造にすること
・風荷重や衝撃を受けても、変形しすぎない線径・素材を選ぶこと
・量産時にパターンの再現性を担保すること
X-Labでは、試作を何度も繰り返し、編み方やテンションを微調整。現場を知る技術者、図面を引く設計担当、強度試験を行う検査担当が「ここまでなら曲げていい」「ここから先は危険」と議論しながら、デザイナーと一緒に“落としどころ”を探りました。
NETBENCH:金網の「しなやかさ」を座り心地に変える
JIDAデザインミュージアム セレクションを受けた「NETBENCH」は、「人が触れて座る金網」をテーマにしたプロジェクトです。
きっかけは、X-Labで行った社内ワークショップ。社員がひし形金網に座ったり、揺らしたりしているうちに、「ハンモックみたいで気持ちいい」という声が上がりました。ここから、「座り心地をデザインするベンチ」という方向が見えてきます。大学との共同研究では、荷重によるたわみ量や身体への圧力を測定し、「柔らかいけれど、沈みすぎない」最適な線径と網目を検証。感覚とデータの両方を頼りに、今の形が生まれました。
X-Labでのコラボレーションとプロジェクト体制
ひとつのプロジェクトには、想像以上に多様な職種が関わります。
・コンセプトを描くプロダクト/空間デザイナー
・線材や編み方を決める生産技術・工場スタッフ
・強度・耐久性を検証する品質管理担当
・展示会や広報を担うマーケティング担当
X-Labは、これらがフラットに意見を出せる場として機能しています。デザイナーの「こんな曲げ方はできる?」に対して、職人がその場で簡易ジグをつくって試す。大学から届いたデータを見ながら、「じゃあ次は網目を5mm小さくしてみよう」と即座に次の一手を決める。そんなスピード感で、アイデアは形になっていきます。
ひし形金網で“ワクワクする暮らし”をつくる文化
共和鋼業が大切にしているのは、「安心・安全」と「ワクワクする暮らし」の両立です。
工業用の落石防護網や外柵フェンスで社会インフラを守りつつ、インテリアやファサード、家具といった領域へも踏み出す。その背景には、「ひし形金網の可能性は無限大」という信念があります。
社内では、環境負荷を減らす工夫や、省エネ・廃棄ロス削減も同時に進行。展示会や異業種とのコラボを通じて、「金網で何ができるか」を一緒に考えるパートナーも増えています。ひし形金網を通じて、心地よい毎日を静かに支える——そんな文化が、プロジェクトの原動力になっています。
ものづくりが好きな人が応募前にやっておくと良い3つの準備
ひし形金網のプロジェクトに関わってみたい人に向けて、実践的な準備を3つ紹介します。
1. ポートフォリオの見せ方
単に完成写真を並べるのではなく、「課題→アイデア→試作→改善→最終形」というプロセスが分かる構成に。失敗例や試行錯誤も、ぜひ入れてください。
2. 現場見学のポイント
設備の種類や線材の違いだけでなく、「どこで人の判断が入っているか」「安全や環境にどう配慮しているか」を意識して見ると、質問の質が変わります。
3. 面接で刺さる質問例
・「ひし形金網の可能性を広げる上で、これから挑戦したい領域はどこですか?」
・「最近のX-Labのプロジェクトで、特に印象的だった試作や失敗はありますか?」
・「異業種やデザイナーとのコラボで、現場の技術とどう折り合いをつけていますか?」
素材の可能性にどこまでワクワクできるか。その視点が、次のプロジェクトを動かしていきます。