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【町工場×事業承継】ゴム製造業が“攻め”に転じる瞬間―フコク産業の事例で学ぶ、製造業の新しいキャリアチャンス

ゴム製造業 , 中小企業M&A , 事業承継 , 技術営業 , 町工場

2026.03.12

「縮む業界」どころか、裁量が一気に広がるフェーズにある製造業

日本の製造業は、高齢化と後継者不足で「先細り」のイメージを持たれがちです。しかし現場では、むしろ若手に経営レベルの仕事が回ってくる「権限移譲フェーズ」が一気に進んでいます。事業承継やM&Aを通じて、数十年分の技術・取引先・設備をまるごと引き継ぎながら、新しい収益源をつくる役割を担えるチャンスが増えているのです。

大阪府八尾市のフコク産業株式会社は、その典型的な事例です。工業用ゴム・シリコーン製品の製造販売を行う同社は、創業50年を超える町工場でありながら、赤字からのV字回復と「攻めの事業承継」に踏み出しています。

おでん屋台大将から4代目社長へ――“外の目線”が町工場を変えた

現社長の清水隆裕氏は、もともと家業を継ぐ気はなく、サーフィン留学やおでん屋台の運営、飲食業界向け求人広告会社での営業と、全く別のキャリアを歩んできました。そんな「異業種出身者」が、赤字だった町工場の再建に挑んだことが、フコク産業の転機になりました。

入社後は現場から営業、品質管理まで一通りを経験し、そこから見えたのは「業界の常識を疑う余地」でした。業界では難しい案件に対して「無理」と答えるのが当たり前。しかし清水氏が一つひとつ検証すると、実は8〜9割は工夫次第で対応可能でした。ここから生まれたのが、同社のポリシー「無茶ぶり大歓迎」です。

この姿勢が新規案件や他社では断られた仕事を呼び込み、「どうすればできるか」を起点にした開発・提案型の仕事が増加。単なる下請けから、技術と発想で価値を出すパートナー企業へとポジションを変えつつあります。

事業承継・M&Aが生む、若手にとっての“攻めの仕事”

フコク産業がいま注力しているのが、「業界を守る」ための事業承継です。後継者不在で廃業を選ぶ町工場から、金型や仕事そのものを引き継ぎ、自社で生産を継続する取り組みを進めています。場合によってはM&Aという形で会社ごと引き受けることも視野に入れています。

こうした動きが加速すると、若手には次のような役割が生まれます。

  • 引き継いだ製品・金型の立ち上げ・改善(生産技術・品質管理)
  • 旧来の取引先との関係構築と新提案(営業・技術営業)
  • 複数工場・協力会社を束ねる生産計画・原価管理(マネジメント)
  • 新素材(シリコーンなど)や新分野(医療・食品・半導体)への展開

単に「ラインに入る」だけではなく、事業そのものを組み立て直す仕事がセットで発生するため、30代前半から事業責任者に近い経験を積める可能性があります。

どんなポジションで若手が伸びるのか

ゴム・シリコーンの製造業で、若手が大きく成長しやすいポジションは次の3つです。

1. 技術営業

顧客の「こんなもの作れる?」という相談を、設計・製造と一体になって形にしていく役割です。フコク産業の「無茶ぶり大歓迎」を体現するポジションで、材料知識とコミュニケーション力の両方を磨けます。

2. 生産技術・品質管理

引き継いだ金型や新素材を、安定した品質とコストで量産するための要となる仕事です。ここを任されることで、製造現場を俯瞰しながら改善をリードする力が付き、将来の工場長候補にもなり得ます。

3. 新規事業・商品企画

ドアノブカバーなど自社商品の開発・展開や、シリコーンを使った医療・食品用途への参入など、「メーカー化」を進める役割です。BtoBだけでなく、ECやクラウドファンディングを活用したBtoCも視野に入り、マーケティング感覚とモノづくりの両方を鍛えられます。

入社前からできる、「将来経営に関わる人材」への準備

製造業で将来、経営や事業承継に関わりたい人が、今から準備できるポイントは多くあります。

  • 現場見学やインターンで、工程・設備・人の動きをセットで見る癖をつける
  • 簿記や会計の基礎を学び、「製造コスト」の中身を理解しておく
  • 材料や加工に関する基礎知識(ゴム・金属・樹脂など)を幅広くインプットする
  • 小さくてもいいので、自分で売上をつくる経験(ネット販売、イベント出店など)を持つ
  • 事業承継や中小企業M&Aに関する本・事例記事を読み、「会社を引き継ぐ」とは何かを知る

こうした準備をしておくと、入社後に任される仕事の解像度が高まり、「単なる職人」ではなく「事業をつくる人材」として評価されやすくなります。

ゴムのように形を変えながら、キャリアも伸ばしていく

フコク産業が扱うゴムは、硬さも形も自在に変えられ、衝撃を吸収したり、すき間を埋めて漏れを防いだりする素材です。清水社長は、その柔軟さを「人や会社のあり方」に重ね合わせます。社会や業界環境が大きく変わるいま、固定観念をやわらかくほぐしながら、自分の役割を変形させていける人ほど、製造業でのキャリアは伸びていきます。

高齢化と後継者不足の先にあるのは、決して「終わり」ではなく、世代交代を通じた大きなバトンタッチです。事業承継やM&Aが日常的な選択肢になりつつある今こそ、町工場から業界全体を支えるプレーヤーへと成長していくチャンスが広がっています。