おでん屋台から始まった「キャリア迷子」の10年
大学卒業後、私はいきなりおでん屋台を始めました。夜の商店街でお客さまと向き合い、「また来るわ」の一言に一喜一憂する毎日。そこから飲食求人広告の営業、パン屋での製造と販売へと転職し、「食」と「人」に関わる仕事を転々としてきました。
一見バラバラなキャリアですが、どの仕事でも共通していたのは「目の前の人にどう喜んでもらうか」を考え抜くこと。数字よりも、表情や空気の変化で成果を感じる働き方が、自分の軸になっていきました。
家業のゴム工場へ。「継ぐつもりはなかった」二代目の本音
そんな中で持ち上がったのが、家業であるフコク産業をどうするかという話。正直、最初は「自分には向いていない」と思っていました。製造業の知識もなく、町工場の社長になるなんてイメージできなかったからです。
それでも工場に入ってみると、長年働いてきた職人たちの姿と、黙々と動き続ける機械を前に、「ここを終わらせたら、この人たちの仕事もお客様のラインも止まる」という現実が見えてきました。「自分がやるしかない」と腹をくくったのは、その時です。
赤字体質からの再スタートで見えた「人を大切にする経営」
引き継いだ当時のフコク産業は、決して余裕のある状態ではありませんでした。コスト削減だけを考えれば、扱う仕事を減らし、人を減らす選択もありえます。しかし私は、異業種で学んだ「人がいなくなれば、サービスは成り立たない」という感覚を捨てられませんでした。
そこで着手したのは、単なる値下げ競争からの脱却と、現場メンバーの強みを活かす仕事づくり。「無茶ぶり大歓迎」というスタンスで難しい案件に挑み、その過程でスキルを伸ばし、利益もしっかりと確保するサイクルを回すことを目指しました。
評価・学び・働き方の柔軟さ──現場目線で整えたしくみ
経営の立て直しと同時に、働きやすさを高める仕組みづくりも進めています。たとえば、
- 「仕事の丸投げ」ではなく、できる工程から少しずつ任せる評価・育成
- 外部セミナーや工場見学など、希望ベースで選べる学びの機会
- 子育てや介護、ダブルワークなど事情に合わせたシフトや業務分担
いきなり完璧な制度は作れませんが、「この人は何を大事にして働きたいのか」を対話しながら、一緒に働き方を組み立てていく文化を意識しています。
異業種出身だからこそ言える、製造業の「おもしろさ」
製造業は、外から見ると「地味」「きつそう」と思われがちですが、異業種から入った私には、むしろクリエイティブな仕事に感じられます。ゴムやシリコーンという素材をどう活かし、お客様の「困った」を形にしていくか。
現場では、試作を重ねてうまくいった瞬間の「できた!」という手応えが、ダイレクトに味わえます。完成した部品が医療や半導体、食品など、さまざまな分野で使われていると知ると、自分の仕事の広がりを実感できるのも魅力です。
未経験から製造業に挑戦したい人への3つのアドバイス
異業種・未経験から製造業を考えている方には、次の3つを伝えたいです。
- 「全部わかってから動く」は不可能。最低限の興味があれば、一度現場を見に行ってほしい
- これまでの仕事で培った強み(接客力、段取り力など)は、必ず製造現場でも役に立つ
- 会社選びでは、製品より「人」と「雰囲気」に注目する。毎日一緒に働く相手を見て決めてほしい
- この会社で「伸びている」と感じる人は、どんな働き方・考え方をしていますか?
- 未経験で入社した人が、一人前になるまでのステップを具体的に教えてください
- 今後5年で、会社としてどんな変化やチャレンジを考えていますか?
- 現場のメンバーは、社長にどんなことをよく相談しますか?
キャリア迷子だった私でも、ものづくりの現場で自分の居場所を見つけられました。迷いながら選んだ道でも、そこでどう関わるかで、キャリアは何度でもつくり直せます。
面接で社長に聞いてほしい質問例
最後に、製造業への転職を検討するとき、面接でぜひ聞いてみてほしい質問をいくつか紹介します。
質問を通じて、「ここで働く自分の姿」がイメージできるかどうか。それが、次の一歩を決める大きな手がかりになるはずです。