フットウェアエンジニアという役割
フットウェアエンジニア(仮称)は、「片足販売を前提にした3Dプリントシューズ」を成立させる要となる職種です。単に履き心地の良い靴をつくるのではなく、「足の機能を守る」視点で、構造・材料・形状を総合的に設計します。左右でサイズや形が異なる足を前提に、必要に応じて左右異なるミッドソール形状、サポート構造、クッション配分を設計するのが特徴です。シミュレーションと試作を高速に回しながら、ユーザーの痛みと不便を具体的なパラメータに落とし込んでいきます。
主要タスク:CAD設計と3Dプリント連携
中心となる業務は3D CADを用いたソールおよびアッパー構造の設計です。足型データや歩行解析結果をもとに、ミッドソール内部のラティス構造、ピッチ、肉厚、剛性分布をパラメトリックに定義します。使用ツールは、一般的なメカCAD(例:Fusion360、SolidWorks)に加え、メッシュ編集ソフトや3Dプリンタ専用スライサーなど。プリント条件(積層ピッチ、充填率、サポート形状)も設計の一部として扱い、造形後の寸法誤差や反りを見越したオフセット設計も日常的なタスクになります。
試作検証と歩行データ解析の流れ
試作品は実際に歩いてもらうことで評価します。足裏圧センサー、IMU(慣性センサー)、モーションキャプチャなどを用いて、接地パターン、足関節の可動域、左右差を可視化します。得られたデータから、どのフェーズ(接地・荷重応答・蹴り出し)で負担が集中しているかを特定し、ラティスの硬さ分布やロッカー形状を調整します。評価指標は、痛みの主観評価だけでなく、関節モーメントや圧力ピーク値など客観指標を重ねて判断するのがポイントです。
異分野バックグラウンドと学び直し
この職種には、機械系、材料系、バイオメカニクス、情報系など多様なバックグラウンドのメンバーが関わります。入社後は、足部解剖、歩行メカニクス、靴型(ラスト)の基礎を短期集中で学び、そのうえで社内のOJTとして実プロジェクトにアサインされます。例えば、機械系出身者はFEMや設計最適化の経験をラティス設計に応用しつつ、「足のどの部位を守る構造なのか」という身体側の理解を重点的に学び直す、といった立ち上がり方をします。
実際のプロジェクトサイクル例
典型的なプロジェクトは、ユーザーの課題ヒアリングから始まります。左右でサイズ差が大きい、特定部位に慢性的な痛みがある、などの情報をもとに、足型スキャンと歩行計測を実施。次に、CAD設計→3Dプリント→仮合わせ→データ計測→再設計というサイクルを1〜2週間単位で回します。1案件あたり複数パターンのソール剛性を並行設計し、ABテスト的に比較することもあります。スピード感と検証の精度をどう両立させるかが腕の見せどころです。
使用ツールとワークフロー上の工夫
ソフトウェアはCAD・解析・データ処理を跨ぐため、ツール連携が重要です。例えば、CADで定義したパラメータをスプレッドシートやPythonスクリプトで一括管理し、ラティス密度やゾーニングを半自動生成するワークフローを構築することがあります。歩行データは、専用解析ソフトに加え、PythonやMATLABで独自指標を算出し、設計パラメータと紐づけて管理します。手作業に頼りすぎず、小さな自動化を積み上げることで、試作サイクルを短縮していきます。
応募前に身につけたい基礎とポートフォリオ例
準備として有効なのは、次のような基礎と成果物です。
- 3D CADでのソール形状やラティス構造のモデリング練習
- 足部の骨格・筋・靭帯の名称と役割、歩行周期の基礎知識
- 3Dプリント経験(素材特性の違いと造形誤差の理解)
- 簡易な歩行・ランニングデータを計測し、グラフ化したレポート
ポートフォリオとしては、「特定の足の課題を想定→設計→試作→評価→改善」のプロセスを、図と数値で整理したミニプロジェクトがあると、実務イメージと適性を伝えやすくなります。