「合う靴がない」20人に1人のリアル
片方だけ足が痛くなる。いつもどちらかの靴だけすり減りが早い。そんな経験がある人は、実は少なくありません。統計的には、約20人に1人が「左右差が大きく、既製品だとどちらかが合わない」と感じていると言われます。それでも店頭に並ぶのは「両足セット」が前提の靴ばかり。サイズを妥協するか、インソールなどでごまかすか、そもそもおしゃれを諦めるか。足か財布か、どちらかの痛みを受け入れざるを得ない人が、静かに我慢を続けているのが現状です。
代表・清水が捨てきれなかった違和感
株式会社DIFF.代表の清水雄一が、この「当たり前」に違和感を持ったきっかけは、本人や身近な人の靴選びの苦労でした。店舗で試着を重ねても、左右どちらかに必ず無理が出る。「我慢して履くのが普通」という空気に、ずっとモヤモヤしていたと言います。シューズ業界では、在庫や管理の都合から両足セット販売が当然とされてきました。しかし、「本当に変えられない前提なのか?」と問い直したとき、片足ずつ売るという発想が、急に現実的な選択肢として浮かび上がってきました。
大阪・梅田で資本金100万円から始めた挑戦
こうして2022年10月26日、大阪・梅田の大阪駅前第3ビルに、資本金100万円の小さな会社としてDIFF.は産声を上げました。最初から潤沢な資金があったわけではなく、在庫・物流・システムなど、片足販売に必要な仕組みを一つひとつ検証しながら前に進むしかない状況でした。それでも、左右で足の大きさが違う人にとって「自分に合う靴を選べるのは贅沢ではない」という思いが、事業の推進力になりました。オフィスはコンパクトでも、「当たり前をひっくり返す」というビジョンだけは最初から大きく掲げています。
片足販売と3Dプリントで「足の機能を守る」
DIFF.の事業は、「片方ずつ買える仕組み」と「足の機能を守る3Dプリントシューズ」という二本柱で成り立っています。左右別サイズで売るだけでなく、3Dプリント技術を活用することで、一人ひとりの足に沿ったフィット感を追求。単なるサイズの問題ではなく、「長く歩いても痛くならない」「姿勢やバランスを崩さない」といった機能面まで含めてデザインしています。シューズを「ファッションアイテム」だけでなく、「身体を支えるインフラ」として捉え直すことで、健康面からも新しい価値を生み出そうとしています。
常識を疑う仕事の面白さとしんどさ
「片足ずつ売るなんて聞いたことがない」と言われる度に、それがDIFF.の面白さであり、同時にしんどさでもあります。前例が少ない分、参考になる事例も少ない。ロジックだけでなく、世の中の感覚も変えていく必要があります。一方で、「片足だけ買えるなんて思わなかった」「これなら痛みを我慢しなくていい」といった声を直接もらえるのは、大きなやりがいです。正解が用意されていない領域で、自分たちの手でルールをつくっていく。そのプロセスそのものを楽しめるかどうかが、この仕事を続けられるかの分かれ目になります。
「ここで働くかも」と考えたときに整理しておきたいこと
もしDIFF.の取り組みが少しでも気になったら、自分の中で次のような軸を整理してみるとよいかもしれません。
- 左右で足の大きさが違う人の不便さを、自分ごととして想像できるか
- 「しょうがない」とされてきた前提を、本気で疑ってみたいと思えるか
- 片足販売や3Dプリントシューズというアイデアに、事業としての可能性を感じるか
- 決まった答えがない環境で、試行錯誤を楽しめるタイプか
スキルや経歴よりも、こうした価値観へのフィット感が大きなカギになります。
「諦めなくていい世界」を一緒に想像してみる
DIFF.が変えようとしているのは、靴の売り方だけではありません。「自分に合うシューズを望むことはわがままではない」という、当たり前の感覚そのものです。これまで、体の痛みか財布の痛みか、どちらかを飲み込むしかなかった人たちに、第三の選択肢を届けたい。その発想は、シューズ以外の領域にも広がっていくかもしれません。常識を疑うことは、ときに面倒で、周囲から理解されづらいこともあります。それでも、「諦めなくていい世界」は、誰かがその面倒を引き受けないと始まりません。DIFF.の挑戦は、そんな小さな一歩から続いています。