「足の痛みに一番近いエンジニア」の仕事とは
3Dプリントシューズの開発エンジニアと聞くと、専門用語だらけの職人を想像しがちですが、DIFF.のエンジニアは少し違います。キーワードは「ユーザーの足の痛みに一番近いエンジニア」。技術より先にあるのは、「この人はどこが痛いんだろう」「どうすれば今日より楽に歩けるだろう」という問いです。そこから逆算して、足型データや3Dモデル、プリント技術を使いこなしていきます。
1足ができるまでのプロセス
1. 足型データを読み解く
最初の仕事は、ユーザーの足を知ること。スキャンデータや計測値を見ながら、
- 左右差はどれくらいあるか
- どこに荷重がかかりやすいか
- これまでどんな靴で痛みが出ていたか
といった情報を整理します。ここで必要なのは「医療の専門知識」より、「なぜこの人は困っているのか」を想像できるかどうかです。
2.3Dモデルを設計する
次に、CADツールでソールやアッパーの3Dモデルをつくります。足の当たりやすい部分を少し逃がしたり、土踏まずを支えるアーチ形状を調整したりと、ミリ単位での工夫が詰まります。ここで重要なのは、見た目を整えるだけでなく「実際に歩いたときの力の流れ」をイメージしながら形状を決めることです。
3. プリント条件をチューニング
同じモデルでも、プリント条件が変われば履き心地は大きく変わります。
- どの素材を使うか(柔らかさ、耐久性)
- 内部構造(インフィル)のパターン
- 積層ピッチや出力速度
といったパラメータを調整し、「この人にとってちょうどいい柔らかさ」を探していきます。ここはまさに、エンジニアの腕の見せどころです。
4. テストとフィードバックの反映
試作品ができたら、実際にテストユーザーに履いてもらい、歩行してもらいます。
- どのタイミングで痛みや違和感が出るか
- 長時間履いたときにどう変化するか
- サイズ感やフィット感の主観的な声
といったフィードバックを、再びデータに落とし込みながらモデルを改良。「1回で完璧を狙う」より、「試す→直す」をスピーディに繰り返すことが、良い一足を生み出す近道です。
文系出身でも目指せる?キャリア事例とポテンシャル
3DやCADと聞くと理系向きに思えますが、DIFF.には文系出身で活躍しているエンジニアもいます。共通しているのは、
- ユーザーのストーリーを聞くのが好き
- 地道なトライ&エラーを楽しめる
- 数字やデータを「意味のある物語」に変換できる
といった素質です。論理的に考える力と、相手の立場でイメージする力があれば、文系・理系の出身は大きなハンデにはなりません。
転職希望者向け:ポートフォリオの見せ方
3DプリントやCAD未経験でも、次のようなポイントを押さえると、ポテンシャルを伝えやすくなります。
- 「課題→仮説→試行→結果」を1ページでまとめたミニプロジェクト
- 既存の靴や身の回りの道具を観察し、「こう変えたい」という改善案を図やスケッチで整理
- 学習ログ(どの教材を使い、どんなアウトプットをしたか)を時系列で可視化
完成度の高さより、「考え方の筋道」と「改善の跡」が見えることが重要です。
独学で始める3D・CAD勉強法
まずは無料・低コストのツールと教材で、「触ってみる」ことから始めるのがおすすめです。
- ブラウザで使える3Dモデリングツールで、簡単なパーツを真似してつくる
- YouTubeのチュートリアルを見ながら、同じモデルをトレース
- 身近な物(自分のスニーカーなど)を採寸して、簡易的に再現してみる
「完璧な理解」を目指すより、「とりあえず1個つくってみる」。その小さな一歩が、3Dプリントシューズ開発への近道になります。
足の当たり前を問い直すエンジニアリング
シューズ業界では、いまでも「両足セットで同じサイズ」が当たり前です。でも現実には、20人に1人が「どちらかの足に合わない靴」を履いています。3Dプリントシューズの開発エンジニアの仕事は、その「しょうがない」を前提にしないこと。一人ひとりの足に向き合い、テクノロジーで選択肢を増やしていく営みです。もしあなたが「誰かの不便や痛みを、具体的な仕組みで変えたい」と思うなら、3Dプリントシューズ開発というフィールドは、想像以上におもしろい世界かもしれません。