脱サラ、倒産、そして「もう一度挑戦したい」という気持ち
株式会社コミックエージェント代表取締役・伊藤貴志は、もともと安定したサラリーマンでした。そこから脱サラし、飲食店で起業。しかし事業は軌道に乗らず、ほどなく倒産を経験します。経営者としても、一人の社会人としても大きな挫折。借金、プレッシャー、自信の喪失――「もう一度起業したい」と口にすること自体が怖くなるような時期もあったと言います。
それでも伊藤が諦めなかったのは、「自分で事業をつくることで、誰かの人生に長く関われる仕事がしたい」という思いでした。飲食事業での失敗は、決して美談ではありません。しかしその失敗が、「次こそは自分の強みと誰かの才能を生かせる事業をつくろう」という決意につながっていきます。
14歳でマンガ大賞受賞──取締役・伊藤しーりんの原点
転機となったのは、現在のパートナーであり、取締役・塾長を務める伊藤しーりんとの出会いです。しーりんは10歳で中国・上海から来日。日本語が十分に分からない中で、日本のマンガに出会い、その表現力に衝撃を受けました。
「文字が読めなくても、コマ割りと表情だけでストーリーが伝わる。」その体験が、「自分も漫画家になりたい」という強い動機に変わります。14歳でマンガの大賞を受賞し、やがてプロとしてイラスト・デザインの仕事へ。伊藤が「事業をもう一度やりたい」と話したとき、しーりんは「絵なら教えられる」と答えました。この一言が、マンガ・イラストスクール事業の出発点になります。
「個人の希望に寄り添う」スクールへと成長
2016年、大阪・南堀江で「堀江アートスクール」を開校。5歳から70代まで、現在は約450名が通う大阪最大級のマンガ・イラストスクールへと成長しました。特徴は、最初のヒアリングで「何を描きたいのか」「どうなりたいのか」を丁寧に聞き取り、講師が一人ひとりに合わせて教える完全個別指導スタイルであること。講義型ではなく、生徒のペースと興味に合わせてカリキュラムを柔軟に変えます。
このスタイルが評価され、不登校の中高生が多く集まるようになったことをきっかけに、通信制高校のサポート校「堀江アート高等学院」や「堀江アートスクール中等部」も開校。「絵が上達して自信がついたことで、学校に通えるようになった」という生徒も少なくありません。コミックエージェントは、単なる技術教育ではなく、「絵で人生を支える」場になりつつあります。
「人間力の向上」を掲げる組織文化
コミックエージェントの講師は、全員が「絵を描くことが好き」な現役のクリエイターたちです。代表・伊藤が彼らに求めているのは、技術だけでなく「人間力」を高めること。生徒の要望をどう汲み取り、どのような声がけをすれば一歩踏み出せるのか。そうした試行錯誤を通じて、講師自身も成長してほしいと考えています。
講師の人間的成長は、生徒の満足度を高め、スクールの価値を高め、やがて会社全体の発展につながる。この「成長の連鎖」をつくることが、コミックエージェントの組織づくりの核心です。
未経験から飛び込む「クリエイティブ教育」というキャリア
同社には、教育業界もクリエイティブ業界も未経験で入社し、活躍している社員がいます。共通しているのは、「自分の経験を、誰かの再スタートの力に変えたい」という思いです。
例えば、前職で大きなプロジェクトに失敗し、自信を失っていた社員。面接では、その失敗を隠さずに話したうえで、・なぜ失敗したと考えているのか・そこから何を学んだのか・次はどう行動を変えたいのかまでを具体的に言語化したと言います。
コミックエージェントが重視するのは、「完璧な経歴」よりも「挫折を次の一歩につなげる姿勢」です。社員自身がリスタートを経験しているからこそ、生徒の不安や葛藤にも寄り添える。その実感が、教育サービスの質にもつながっています。
応募前に意識したい、自己PRのポイント
クリエイティブ教育の現場に関心がある人が、自己PRで意識しておきたいポイントは次の3つです。
- 失敗経験を「事実」「原因分析」「学び」に切り分けて語ること
- 「なぜこの会社なのか」を、代表やスクールのストーリーと結びつけて説明すること
- 自分が誰かの挑戦を支えた、または支えたいと思った具体的なエピソードを示すこと
華やかな成功体験よりも、「うまくいかなかった経験をどう意味づけ直したか」の方が、コミックエージェントでは評価されやすいと言えるでしょう。
キャリアの挫折を、「誰かの一歩を支える仕事」に変える
飲食店の倒産から、マンガ・イラストスクール事業の立ち上げへ。14歳でのマンガ大賞受賞から、「日本のマンガ文化を世界に伝えたい」というビジョンへ。コミックエージェントの歴史は、挫折や原体験を、次の挑戦へと変えてきた歩みでもあります。
キャリアに悩むタイミングは、誰にでも訪れます。そのとき、自分の失敗や迷いを否定するのではなく、「誰かの再スタートを支える力」に変えていく。そんな働き方に関心がある人にとって、コミックエージェントの物語は、一つの具体的なロールモデルになるはずです。