船大工の祖父と、海のそばで育った幼少期
大阪で生まれ育った林の原点には、淡路島で船大工をしていた祖父の存在があります。海の話を聞き、生き物に触れながら過ごした幼少期は、「海で生きる」という感覚を自然に植えつけました。
水族館よりも港が好きで、魚市場のにおいもワクワクの対象。家族の会話にはいつも「船」「魚」「潮の流れ」といった言葉があり、進路を考える頃には、海や生き物に関わる仕事を選ぶことが、ごく当たり前の選択肢になっていきました。
女子大生が水産学を選んだ理由と、養殖との出会い
進学先に選んだのは、水産学部・水産学科。周囲からは「なぜ女子が水産?」「魚がそんなに好きなの?」と驚かれましたが、林の関心は「生き物の命をどう守り、増やすか」にありました。
大学・大学院では養殖を専門に学び、魚の生理や生態、飼料や水質管理などを徹底的に研究。実験で夜通し魚と向き合う日々は、「海の資源を守りながら、人の食を支える仕組みをつくる」というテーマを、単なる夢ではなく具体的なキャリアの軸へと育てていきました。
世界最大級の水産飼料メーカーで学んだ「現場と世界」
卒業後に選んだのは、世界最大級の水産飼料メーカー。養殖の“エサ”は、魚の健康と味、さらには事業性を左右する要。国内外の養殖現場を回りながら、林は「技術だけでは持続可能な養殖は実現しない」と痛感します。
原料の調達から配合、コスト、環境負荷、働く人の暮らしまで、一本の飼料の背景には複雑なサプライチェーンが広がっている。そのリアルを体感したことで、「水産物を通じて世界と未来をつなぐ」という後のミッションの、土台となる視点が育ちました。
アフリカの児童労働と「魚の釣り方を伝えたい」という決意
ターニングポイントは、アフリカのレアメタル採掘現場を訪れた経験です。命の危険と隣り合わせで働く子どもたちを目の当たりにし、「この子たちに、今だけの支援ではなく、生きていく力を渡したい」と強く感じました。
そこから生まれた言葉が、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を伝えたい」。養殖の技術と仕組みを届けることで、タンパク源の確保・外貨獲得・雇用・インフラ整備まで連動させる——そんな循環モデルをつくる構想が、明確な目標として立ち上がりました。
水産流通ベンチャーでの挑戦と、A.A.O passion創業
水産飼料メーカーの後は、水産流通ベンチャーへ。生産から輸出、飲食・観光までを一気通貫で捉える視点を身につける一方、スピード感ある現場では大小の失敗も経験しました。
価格競争に埋もれてしまいそうになったとき、「相場に合わせるだけでは、意味は残せない」と痛感。そこから2018年、株式会社A.A.O passionを創業します。
「完全養殖の安心安全な魚介類を、関西空港から世界へ」「100年後の教科書に載る会社に」というビジョンを掲げ、水産物・食品の輸出アドバイス、自社物件を活用した民泊・飲食など、多角的な事業を立ち上げていきました。
「水産物を通じ世界と未来をつなぐ」が口先で終わらない理由
A.A.O passionの事業は、単なる商流づくりではありません。例えば、折れた足やツノで廃棄される伊勢海老を買い取りラーメンに活用する「RAMENえびの女神」、温泉の排熱や工場の未利用熱を活かしたオニテナガエビ養殖の構想など、資源を無駄にしない仕組みづくりに挑戦しています。
「お金を残すより、意味を残したい」。そんな価値観を体現するため、養殖事業専業の株式会社AB bankも設立。外貨獲得・タンパク質の確保・働く場所の創出を同時にかなえるモデルづくりを、国内外で進めています。
就活・転職で「ミッションに本気な会社」を見極める3つの質問
A.A.O passionのストーリーは、「ミッションに本気な会社か」を見極めるヒントにもなります。面談や説明会では、例えば次のような質問を投げかけてみてください。
- 10年後・30年後に、事業を通じて社会をどう変えたいですか?
- そのビジョンのために、今すでに始めている取り組みは何ですか?
- 利益とミッションがぶつかったとき、どんな意思決定をした事例がありますか?
これらに具体的なエピソードで答えられる会社は、言葉だけでなく行動でミッションを語っている可能性が高いと言えます。A.A.O passionの物語と照らし合わせながら、自分のキャリアの“相棒”になりうる組織を、ぜひ見つけてみてください。