1. 「海のそばで育っただけ」じゃなかった──林律子が気づいた原点
林律子の原点には、淡路島で船大工をしていた祖父の存在があります。幼い頃から海と船、魚に囲まれて育ちながらも、当時はそれを「特別」とは思っていませんでした。転機は、進路を考え始めた高校時代。海のない地域で暮らす人たちにとって、魚や海産物がどれほど貴重な存在かを知り、「自分にとって当たり前の海は、誰かの生活を支える資源なのだ」と気づきます。海と人の暮らしをつなぐ仕事をしたい。その気づきこそが、後のA.A.O passionのビジョン「水産物を通じ世界と未来をつなぐ」へとつながっていきました。
2. 船大工の血と水産学の学びが交わった瞬間──“養殖”というフィールドとの出会い
大学・大学院では水産学を専攻し、特に養殖分野を深く学んだ林。海という巨大な自然と、人の技術が交わるダイナミックな現場に惹かれました。祖父が船をつくり漁師を支えたように、自分は「魚をつくる技術」で現場を支えたい──そう考えたとき、「養殖」は最もワクワクするフィールドになりました。完全養殖技術、飼料・種苗、輸送・流通の仕組みまでを一貫して理解することで、「海の恵みを守りながら、必要な人に安定して届ける」道筋が見えたと言います。現在掲げる「完全養殖の安心安全な魚介類を、関西空港から世界へ」というビジョンは、この時期の探究心から生まれています。
3. レアメタルの谷間で見た子どもたち──『魚の釣り方』への考えが変わった日
林の価値観を決定づけたのが、アフリカのレアメタル採掘現場で目にした光景です。採掘に従事する子どもたちは、危険と隣り合わせの労働で日々をしのぎ、教育や医療とは無縁の生活を送っていました。「今ここで魚を配るだけでは、明日も同じ状況が続く」と痛感した林は、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を伝えたい」と強く思うようになります。単発の支援ではなく、技術と仕組みを現地に根づかせ、自ら稼ぎ、自ら食を生み出せる状態をつくること。養殖技術と流通の知識を、誰かの“生きる力”に変えること。これが、のちの養殖コンサルティング事業やAB bank設立構想の核になっていきました。
4.会社員時代にこぼれ落ちていたもの──A.A.O passion誕生までの迷いと決断
卒業後は、水産飼料メーカーや水産流通会社、ベンチャー企業などで経験を重ねた林。グローバルなサプライチェーンや最先端の技術に触れながら、「水産×ビジネス」のダイナミズムを体感しました。一方で、大きな組織では「この生産者の想いを、もっと丁寧に汲み取りたい」「未利用資源を活かす仕組みを、現場視点でつくりたい」と感じても、すべてを自分の判断で動かすことは難しい現実もありました。「お金を残すより、意味を残したい」「関わる人の夢が叶う場を自分でつくりたい」。その想いが積み重なり、2018年にA.A.O passionを創業。水産・食品の輸出入アドバイザー事業、自社物件を活かした民泊・飲食・体験事業などを組み合わせ、「食と地域」を軸にしたユニークな事業が生まれていきます。
5. 養殖コンサルとAB bankが目指すもの──「一度きりで終わらない支援」のかたち
A.A.O passionと、2023年に設立した養殖特化の株式会社AB bankが目指すのは、「一度きりの取引で終わらない支援」です。日本の水産事業者には、海外輸出のノウハウ不足や資金・販路の課題が山積しています。林は、水産飼料・養殖技術・輸出実務を一気通貫で支援し、持続可能なビジネスモデルにまで落とし込むことを重視しています。例えば、淡水で養殖できるオニテナガエビと、温泉の排熱や工場の未利用熱といった地域資源を掛け合わせるプロジェクト。「外貨の獲得」「タンパク質の確保」「雇用とインフラ整備」という好循環を、国内外の地域に広げる構想です。水産版「地方創生」とも言える挑戦に、現場のリアリティとグローバルな視点で向き合っています。
6. 林が一緒に海を目指したい人──“常識より現場”を選べる人材像
林がともに働きたいのは、「答えのない現場を楽しめる人」です。A.A.O passionの仕事は、教科書通りにいかないことばかり。相場や慣習に縛られず、5,500円の伊勢海老ラーメンのように「おいしさ」と「ストーリー」で価値をつくる発想が求められます。求める人物像のキーワードは、次のようなものです。
- 常識を疑い、「なぜそうするのか」を自分の頭で考えられる人
- 海・食・地域が好きで、現場に足を運ぶのを苦にしない人
- 失敗を恐れず、小さく試して学び続けられる人
RAMENえびの女神やMATCHA賛想庵など、飲食・観光・体験事業も含めて、水産の“出口”をどうデザインするかを一緒に考えられる人にとって、ここは挑戦の幅が広い環境です。
7. 面接までにしてほしい3つの準備──A.A.O passionで早く価値を出すために
林は、「面接は正解探しではなく、一緒に未来を描く場」と語ります。そのうえで、入社前から価値を発揮するために、次の3つの準備を勧めています。
- 自分の原体験と言葉を整理する海・食・地域・人の暮らしに関する経験から、「なぜこの分野なのか」を自分の言葉で説明できるようにしておく。
- 水産・食の課題を1つ深掘りしてくるフードロス、輸出規制、養殖の環境負荷など、関心のあるテーマを選び、「自分ならどう関わりたいか」を考えてくる。
- 現場に近い体験をひとつ積む市場見学、漁港・産直の訪問、海外の食品売り場の視察など、小さくてもよいので「食の現場」を自分の目で見る。
こうした準備を通じて、「誰かの命を支える仕事」を自分ごととして考え始めた人にとって、A.A.O passionは、その想いを形にできるフィールドになっていきます。