なぜ「サステナブル水産」が今、世界で求められているのか
世界人口は2050年に約97億人に達すると予測され、タンパク質不足が国連をはじめ各国の大きな課題になっています。FAOによれば、天然漁業の約3分の1はすでに乱獲状態とされ、海から「獲る」だけでは持続が難しい状況です。そこで、環境負荷を抑えた養殖=サステナブル水産が急速に拡大しています。ESG投資残高も世界で数千兆円規模に達し、水産・フードテックは重要テーマの一つです。単なる「食ビジネス」ではなく、食料安全保障・気候変動・地域経済を同時に解決しうる分野として注目されています。
オニテナガエビ養殖と未利用熱活用という日本発モデル
株式会社A.A.O passionと養殖事業会社AB bankが注目するのが、淡水で養殖できる「オニテナガエビ」です。高級食材でありながら、日本では本格的な産業化が進んでおらず、成長温度帯が温泉の排熱や工場の未利用熱と相性が良い点が特徴です。従来は捨てられていた熱エネルギーを水温維持に活かすことで、エネルギー効率と収益性を両立した国産モデルが描けます。さらに、飼料・種苗など「見えない部分」まで国産化することで、国内循環型のサプライチェーンを構築しうるポテンシャルがあります。
海外動向と比べて見える、日本の遅れとチャンス
ノルウェーやチリでは、サーモン養殖を国家戦略として位置づけ、輸出産業として育成してきました。たとえばノルウェーのサーモン輸出額は、日本の主要水産品を上回る規模に成長しています。一方、日本は高い養殖技術を持ちながら、輸出インフラやマーケティング、人材面で出遅れてきました。A.A.O passionは「水産物・食品(水産・輸出)流通アドバイザー」として、現場の輸出ニーズに寄り添い、産地と海外マーケットをつなぐ役割を担っています。いまは、技術・地域資源・観光を束ねて、国際競争力のある水産ビジネスを再設計する好機だと言えます。
地方創生・外貨獲得・タンパク質問題へのインパクト
オニテナガエビのような養殖事業は、地方に多面的な効果をもたらします。第一に、温泉地や工場集積地など、これまで活かしきれていないエネルギー資源を収益源に変えることで、新たな雇用を創出します。第二に、完全養殖と輸出を組み合わせれば、外貨獲得と地域ブランド向上に貢献できます。第三に、動物性タンパク質を安定供給できるインフラとして、国内外の栄養問題の緩和にもつながります。A.A.O passionが掲げる「外貨の獲得・タンパク質の確保・働く場所の確保・インフラ整備」の好循環は、まさに地方から世界を変えるモデルケースになりえます。
A.A.O passion・AB bankが体現するビジョンと文化
代表・林律子氏は、船大工だった祖父の影響で海と生き物に親しみ、水産学・養殖を専門に学んだプロフェッショナルです。世界最大級の水産飼料メーカーや水産流通会社での経験を経て、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を伝える」養殖モデルの普及を目指しています。A.A.O passionは、輸出アドバイスに加え、伊勢海老ラーメン店「RAMENえびの女神」や抹茶体験カフェ「MATCHA賛想庵」、民泊事業などを展開し、水産・食と観光を立体的に結びつけています。その根底には「お金より意味を残す」「100年後の教科書に載る会社に」という長期ビジョンがあります。
この業界で求められる人物像とスキルセット
サステナブル水産・養殖で活躍するには、次のような人物像とスキルが求められます。
・現場(生産)と市場(流通・輸出)の両方に関心を持てる人
・前例のないモデルをつくる好奇心と、数字で事業性を考える視点
・英語や東南アジア諸国の言語など、異文化コミュニケーション能力
・水産・環境・エネルギー・観光など、分野横断で学び続ける姿勢
・地域の生産者や行政、海外パートナーと粘り強く関係構築できる対人力
理系・文系のどちらでも挑戦可能ですが、「現場に足を運び、食べて、話す」姿勢が大きな差になります。
今からできる学び方とキャリア構築の3ステップ
学び方としては、水産・養殖・フードシステム関連の入門書や、ESG・サステナビリティの基本書を1冊ずつ押さえ、ニュースでFAOや各国の水産政策を追う習慣が有効です。水産系の学部・大学院で学ぶほか、水産・食品・物流企業でのインターンも現実的な入り口です。
キャリア構築の3ステップの一例は、
1. 本・レポート・ニュースで世界と日本の水産課題を把握する
2. 養殖場や水産関連イベント、飲食店など「現場」に足を運び、自分の関心領域を絞る
3.その領域で事業を進める企業や団体を調べ、自分のスキルで貢献できるテーマを明確にする
という流れです。サステナブル水産は、社会課題の解決とビジネスを両立させたい人にとって、成長余地の大きいフィールドと言えるでしょう。